顧夢の写真展&仲野麻紀ライブ

加速度的に忙しくなってきたこの頃だが、根を詰めて一仕事片付けたおかげで自由な日曜日を手に入れた。午後、高田馬場の小さなギャラリー(Alt_Medium)で顧夢の写真展を観る。A dream of dreamsと題された作品集を頂く。封じ込められた、うつろう瞬間。モノクロームの風景や繊細な雪景色。消えかかる記憶の断片のような寡黙なイメージ群。死がテーマでもあると言う作家の言葉を聞いて、ふとボルタンスキーを思い浮かべる。会場で小冊子『顕微望遠――土地と記憶』を買う。写真とエッセイ。「イレギュラーな歩き方/だから、ずっと歩けるのだ」(金秋雨)。

スマホのバッテリーが怪しくなってきたので、高田馬場駅の喫茶店で充電しつつトルストイ『クロイツエル・ソナタ』とLéonora Miano,L'intérieur de la nuitを読み進める。あたりが暗くなってきたところで六本木のサテンドールへ。18時30分よりマチュメ・ザンゴのデュオ。かつてのライブハウスはおしゃれなフレンチ・レストランに変貌していた。少し遅れてスタート。sax soloのPivoineでスタ―ト。タペストリーのようなたゆとう雰囲気。シーケンサーを使った一人二重奏。モザンビークのミュージシャンであるマチュメはティンビラという木琴を中心にさまざまな民族楽器を操った。ティンビラは共鳴用のヒョウタン(?)がビリビリ鳴る。柔らかなドライブ感。一番驚いたのが、トルコ語で歌われたウスクダラ。有名な曲であり、かつて江利チエミも歌ったそうだが、知らなかった。名曲だ。

仲野麻紀さんのライブにいくといつも思うのだが、彼女はおそらく現在「JAZZ」ととりあえずくくられる音楽の可能性を一番体感できるミュージシャンの一人ではあるまいか。アフロ・アメリカンが北アメリカ大陸で創造した即興音楽のエッセンスは、そもそも他者を取り込むところにある。即興をベースにさまざまな音楽をどんどん取り込める「場」、それがジャズの強さであり、「世界性」なのだと思うのだ。

渋谷毅さんとのデュオ『アマドコロ摘んだ春』を買って帰る。これがまたすばらしい。このアルバムについては、また改めて。