プロヴァンスの庭で

久しぶりに芝居を見た。仕事のあと、中央線で阿佐ヶ谷アートスペースへ。19時開演。山崎哲構成・演出「朗読と音楽の夕べ=劇の立ち上がり」。独創的な朗読劇だ。教え子のYとAFが舞台美術を担当し、彼女らが製作した4人の作家の肖像が壁面を飾っている。銃声音で幕があき、肖像画に描かれた四谷シモン漱石、芥川、太宰のテクストがコラージュされていく。そこにいくつかの詩も加わる。冒頭の四谷シモンの自伝が泣ける。石川真希による鮎川信夫の「小さいマリの歌」が胸を打つ。近代日本が近代的自我を形成していくなかで、社会が壊したものは何かが問われていく。朗読、歌、ダンスが交錯する。小説の地の文が鬼気迫る絶叫調で延々と朗読される一方、せりふが静かに読まれる。あるいはその逆。歌とすばらしいダンスがムードを変える。あるいは気の遠くなるようなポーズをともなって読まれる詩文。「声」を与えられた文学テクストのパフォーマンス。息苦しい日々の暮らしのなかで、久しぶりにたっぷり酸素を吸った気分だ。雨足が強まるなか、駅前で味噌ラーメンを食べて帰る。