志賀高原の村次郎

年が明けてから強い寒気が入った。志賀草津道路を登ってゆくと次第に吹雪になり、圧雪路の上にどんどん新雪が積もってゆく。氷点下12度。時折ホワイトアウトとなり、フォグランプを頼りにようやく対向車を認識する。四駆にスタッドレスでも、うっかりすると雪にはまって動けなくなりそうでかなり緊張する。とてもスキーなどできる状況ではなく、とにかく法坂の宿に辿り着いてほっとした。深々と冷える夜、よく暖房の効いたロビーのソファで『村次郎選詩集 もう一人の吾行くごとし秋の風 管啓次郎選』(左右社)を読了。二人の歩く詩人の幸せな出会い。八戸の詩人、村次郎(1916-1997)の詩文は、くるくるとまわる。「おまへの中に僕を/僕のなかにおまへを」「薔薇の花/花の薔薇」。わずかなことばが、反復しながら広がってゆく。「原と海/砂と波/波と砂/海と原」(砂丘)。

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「啄木鳥」、「郷愁」、「蕪花群鷗」、「童話といふ字」。

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昨年12月5日に、早世してしまった原宏之さんを偲ぶ会があった。暖かい会だった。管啓次郎さんが村次郎のいくつかの詩にメロディをつけてギターで歌った。「寒」、「行く末」には、ぼくもフルートで参加した。原宏之の力作『後期近代の哲学1』を今年はじっくりと読む。

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山は蒼く苦しんで白く晴れる。帰京する3日目、すばらしい朝を迎えた。Uと横手山に向かう。2037mの山頂に向かう最上部のリフトに乗っていると、陽光を浴びる樹氷群がきらきらと輝いた。Uは感嘆する。自分の言葉でその美しさを表現しようとしている。審美的感性はこのようにして獲得される。「・・・はるか前方を/もうひとりの/僕が/歩いて/もうひとつの/道が/続いて」(「業」)。