『銀河鉄道の夜』in 福島

 朝7時半仕事場の青砥にて金環日食をみる。完璧なオレンジ色のリングに思わずうなる。あたりがすーっと薄暗くなるのがスリリングだった。午後、仕事を早目に切り上げて上野に向かう。15時40分のやまびこ67号に飛び乗って一路福島へ。17時11分着。バスで福島音楽堂に到着したのは開演15分前だった。大船渡、仙台と南下してきた『銀河鉄道』東北ツアーの最終日。上演ごとにどんどん変化していく、と管さんは語る。たしかに昨年のクリスマスイブのパフォーマンスとはずいぶんちがっていた。そして相変わらず見事だった。
 小説家古川日出男の口上によってオリジナルの文章は大胆に刈り込まれ、注釈され、ポリフォニックに疾走する。相方の詩人管啓次郎は自らの詩文をそこに編み込み、夜のとばりを川と海に流し込む。音楽家小島ケイタニーラブによる明滅する夜の音響と音楽はとりわけ胸をしめつけるアクセントだ。「フォークダンス」はひときわ大きな恒星として輝いていた。そして翻訳家柴田元幸によって賢治の日本語は読まれるそばから即座に英語に置換される。複数言語によるなんというリバーブ効果! 今宵もまた「銀河鉄道」は小説家と詩人と音楽家と翻訳家の共同作業によって大きな空間に解き放たれ、即興的に輝かしく「演奏」されたのだった。
 東京に帰るがらんとした新幹線のなかで缶ビールを開けて、得難い非日常的な一日の余韻に浸りながら闇夜をぼんやりと眺めた。