グリッサン追悼4

 晩年のグリッサンにもっとも寄り添っていたパトリック・シャモワゾーの追悼文〈L'AFFECTUEUSE REVERENCE〉を読む。グリッサンが故郷マルティニクを語るとき、その夢見られる姿と現実の姿un pays rêvé/un pays réelはつねに重ね描きされ、植民地・海外県の社会的荒廃と神話的イメージの探求の振幅を通じて、土地から土地を超える越境の想像力がほとばしりでるのだった。シャモワゾーはふたつのpaysを貫いて流れる下るレザルド川を歌いながら師を偲ぶ。レザルド川は「詩」を生み出す場所であり、グリッサンはレザルド川のひとつの化身だったのだ。
 土地の言葉がちりばめられまるでグリッサン自身のことばのような文学的な香り高いシャモワゾーのテクストは、(僕には難解だが)それ自体が何よりもグリッサンへのオマージュであると思った。
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エジプトでムバラクが辞任した。レバノンエジプト人のフランス語作家アンドレ・シュディートが亡くなったことを鵜戸くんがメールで知らせてきた。おそらく「エジプト最後のフランコフォン作家」なのだそうだ。