テノール歌手とジェロニモたちの偶景

初台の東京オペラシティで『ザ・テノール 真実の物語』を妻と観る。甲状腺がんで声を失ったが奇跡的に復活を遂げた韓国のテノール歌手、ベー・チェチョルの物語。日野原重明さんの微笑ましいトークもあった。そのあと夕方から馬喰町ART+EATで今福龍太氏を囲むトーク・イベント「ジェロニモたちの偶景」。新著『ジェロニモたちの方舟』出版記念イベントである。伝説的なアパッチ・インディアンの抵抗の戦士、ジェロニモは時空に偏在する。それらをつなぎ合わせて出現させる詩学。グリッサンの試みがここにも展開した。いずれじっくり読まなくてはならない。「領土性」という大陸的思考の縄張り的習性からの脱出の試みとするために。妻には新井高子さんのリミックスがよかったようだった。「漂って、陸に叛けば 碧いジェロニモ、笑え!」という一節が心に沁みる。ぼくもジェロニモのもやしのような影くらいにはなれるだろうか…。しかしいささかくたびれた。近くの居酒屋で焼き鳥を食い、ビールを飲んで帰る。あわただしい今年の夏の一日。(すいぶん経ってからアップした。)