ドン・チードル『Miles Ahead』

昼過ぎに日比谷のシネシャンテへ。しかしなー、「空白の5年間」と副題がついてるのだから、コアなファンとしては当然、70年代後半の断片的スタジオワーク(?)に光を当てるドキュメンタリータッチの作品を期待したわけだ。だがこれは何? 問題は役者が実物のジャズメンに似ていないということではない。空白期の音楽的試行錯誤の暴露への期待が、見事に肩透かしを食らわされるところにある。「70年代後半のマイルス・ミュージック」の唯一の象徴である「オープンリールの音源」は、トランペットが吹けなくなってオルガン「しか弾けなくなった情けない現実」が封印されていただけ、というわけ? それがバレると困るからマイルスは必死にそれを隠蔽するってわけ? えー、そうだったのかー、でもなー、ちょっとなー。亡くなったプーさんがスタジオに呼ばれてマイルスとどんな音楽をしようとしていたのか、とか、マイルス・ミュージック・ヒストリーの深淵、70年代後半の謎は未だ深まるばかりなのであった。エンディングのバンド演奏の映像にショーターとハンコックが出てきたのにびっくり。エスペランサ・スポルディングはあいかわらずかわいいなあ。収穫はロバート・グラスパー。数年前に1枚聞いたときはあまり印象に残らなかったが、追っかけてみるか。