アンフォルメルとは何か

  午後早びけして、東京のブリジストン美術館アンフォルメルを特集した展覧会をみる。20世紀の抽象絵画の流れのなかで、シュルレアリスムの圧倒的な展開を継いで、第二次大戦後にフランスからアメリカへとアヴァンギャルドの中心が移って行く途中にあらわれたヨーロッパの抽象絵画の最後の華ともいうべき「アンフォルメル」の画家たちの表現。彼らの形や色の饗宴は文句なくすばらしい。大好きなフォートリエ! 『黒の青』(1959)の量感と色彩のなんと充実していることだろう。デビュッフェの『暴動』(1961)の極彩色の氾濫。マチウの炸裂。彼らの作品は画集では絶対にわからない。なぜなら、あの絵の具の盛り上がり、あのマッスこそが作品の命であり、あの分厚いマチエールを空間のなかで体験することなしに、作品と出会うことは不可能だからだ。そしてまたアルトゥングのはっとするほどシャープな線たち。プリミティブな生命力と美を発散するタブローたちとと出会い、陶然としたひとときを過ごした。このへんが結局自分にとって一番しっくりくるんだなあ...。
  アンフォルメルとは1950年にミシェル・タピエが当時新しく勃興しつつあった非具象絵画の動向に対して命名したもの。そんな風に括られることに対してフォートリエは用心深く距離を取った。スーラージュは「抽象表現主義などと呼ばれるよりはうまい言い方だけどね」と2011年3月に制作され会場で流れていたビデオのなかで発言している。まあ名前なんてどうでもいいんだけどね...。でもここでふと思ったのだが、リジッドな構築を避けるキース・ジャレットの音楽の本質はアンフォルメル的だと言えるかもしれない(てことはオーネット・コールマンも?)。チック・コリアハービー・ハンコックの知的に構成されたフレーズやハーモニー構造は一方でロシア・アヴァンギャルド的かな。