2011-01-01から1年間の記事一覧

今日で3月も終わり。気がつくと葉山でのエル・アナツイ彫刻展が昨日で終わっていた。残念! 廃品を素材としてこのアフリカの造形作家が生み出す作品が放射する現実への警告がこれほどシリアスに響くときはない。ぼくたちは大きな転換点にいることを自覚すべ…

こんな状況で気が重かったが、計画どおり(少し変更したが)27日から3泊4日で車で家族旅行。27日、東名をひたすら西に300km、愛知県は東三河の小さな山を歩き、新城市の湯谷温泉泊。28日は渥美半島へ。延々と続く菜の花畑のあいだを散歩すると菜種油の匂いが…

VOCA展

午後休暇をとり、放射線物質を含んだ冷たい雨が降る中、上野の森美術館に向かい、The Vision Of Contemporary Art 2011を見る。1994年に始まった40才以下の注目すべき若手作家の平面作品を紹介する同展に初めて足を運んだが、最近の傾向として抽象から具象に…

3.11以後

マグニチュード9.0の関東東北大震災から10日が経った。生きていることはひとつの奇跡なのであってそれは何の前触れもなく断ち切られる可能性があるのだという事実を思い知らされて過ごす日々。放射能の恐怖。友人のひとりがブログで戦争の恐怖を体験したと言…

グリッサン追悼6

エドゥアールへ マリー・ドゥ・ラ・メール マリー・ドゥ・ラ・メール 海のざわめきが語った 父の脅威と父の不在のあいだにゆれながら マリー・ドゥ・ラ・メール マリー・ドゥ・ラ・メール 不可能な水平線の彼方へ向かう眼差しの果てに 蒸発する蜃気楼の城閣 …

ケイジャン&ブードゥー

WC研、大辻さんのナビで「アメリカ地域」に延びる「フランス語圏文化」のふたつの様相を見る。丁寧なレジュメが勉強になり、ありがたい。 ひとつはFlaherty監督のLuisiana Story(1948)米78分。合衆国南部ルイジアナのバイユーを舞台にした「ドキュメンタリー…

サルトリウスへ

今日は汐留の日仏文化協会にてグリッサンが亡くなってから最初の輪読会。巨大なビルや迷路のような地下通路を辿ってようやく到着。いつものように『コエ・ド・ラマンタン』を少しずつ舐めるように読む。そのあとはカレッタの一角にあるジャック・ポットで牡…

解釈という余韻

昨日の朝日夕刊に載った高階秀爾の評論「〈薄霞〉の曖昧さ」を読む。芭蕉の「野ざらし紀行」の一句、 春なれや名もなき山の薄霞は、初稿では「朝霞」だったのが「薄霞」に改められた。朝霞の方が季節の情景が引きしまって伝わるのにあえてぼんやりした後者が…

グリッサン追悼5

2月3日付Le Mondeに載ったル・クレジオの〈Lumière créole sur Faulkner〉を読む。グリッサンの『フォークナー・ミシシッピ』(1996)評である。同書はバトンルージュやニューヨークの大学で教鞭をとった時代の産物である。フォークナーを介してグリッサンは…

グリッサン追悼4

晩年のグリッサンにもっとも寄り添っていたパトリック・シャモワゾーの追悼文〈L'AFFECTUEUSE REVERENCE〉を読む。グリッサンが故郷マルティニクを語るとき、その夢見られる姿と現実の姿un pays rêvé/un pays réelはつねに重ね描きされ、植民地・海外県の社…

グリッサン追悼3

institut du tout-mondeの掲示によれば、フランス時間の今日、グリッサンはマルティニク島のディアマンに埋葬される。norah-mさんがアップしてくれた写真を見ると、まるでsel noirの詩人がその土の下に眠っているようだ。もういちどあの島を訪れる機会はある…

グリッサン追悼2

2月4日Le Mondeのルネ・ド・セカッティによる追悼文。まさにグリッサンは自らの個人性に閉じ籠ることのない「分有と抵抗」の作家であった。「普遍的モデルの偽りの透明性」に抵抗する「不透明さ」の価値を語り続けた彼は「ウォルコットより詩人ではなく、シ…

グリッサン追悼1

このところグリッサンへの追悼文などに目を通して過ごす。 西谷修先生のブログを読むと1996年駒場シンポ、2001年日仏での加藤周一さんとの対談が懐かしく思い出される。臆病者の自分は結局眼前の巨人に一言も声をかけることができなかった。 ★ 中村隆之くん…

エドゥアール・グリッサン死去

本日午前6時(日本時間午後2時)、パリ15区の病院でマルティニク島出身の詩人、小説家、思想家のエドゥアール・グリッサンが亡くなったことを知る。82歳。遺骨はマルティニクに埋葬されるそうだ。昨年末からかなり容体が悪いとの噂を聞いてはいたが...。…

「歌は情に属する」と池澤夏樹は言った(朝日夕刊)。同感である。ぼくは「あなたがた」を心の底から軽蔑している。 ★ 管啓次郎『斜線の旅』読売文学賞受賞! おめでとうございます。傑作です、これは。

夕方

寒さもこの辺が底だね、と皆が言う。コートに初めて裏地を装着して出かける朝、刺すような冷えを実感する。今朝の最低気温は0℃らしい。やあ、冬だな。夕方、歯医者を終えて歩いて帰る途中、見事な夕暮れ。太陽が沈み闇が降りる直前の空は絶妙の青色のグラデ…

日本語の成り立ち

立花先生の論文《Écriture japonaise et diversité du monde》を読む。文字を持たなかった日本人が中国語を導入し、漢字からひらがなを生成し、表意文字と音節文字の混在する言語体系をつくっていった流れ、漢字とひらがなの文化的ヒエラルキーなどを確認す…

寒い日

寒い午後、東日本橋のギャラリー・ハシモトで青木野枝さんの個展最終日に滑り込み。12mmの鉄板を丸くくり抜いた小円盤を溶接して曲線をなす棒状につなげ、それを天井から何本もたらす。有機的でスパイダーにも植物にも見える。根性のいる仕事だね、と呟い…

Le Meme est autre?

翻訳の仕事がひと段落してようやく少し余裕ができた。この疑似日記も昨年の夏以降重要な欠落がたくさんあるので、それぞれにあてはまるところに後から埋め込んでいこう。春からの仕事を考えると実に憂鬱であらゆる気力が萎えていくのだが、考えても仕方がな…

太平洋のまなざし

管啓次郎さんコーディネートのすごく刺激的な講演会を聴く。マーシャル諸島共和国出身のグレッグ・ドボルザークさんによる「日本列島と"ミクロネシア"」、そして今福龍太さんとの対談。なんといってもドボルザークという姓にひきつけられる。どうしたってチ…

樹木展――木と人の心

明治大学生田校舎、ギャラリーゼロへ。最終日にぎりぎり間に合った。子供づれなので入り口でちょっと困った顔をされた。ごめんなさい。小さな空間に入ると、森と自然の声に囲まれる。それは写真や映像、それ自体ひとつの森である展示された本たちから聞こえ…